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「そもそも目的は何ですか?」持ち帰りで終わりかけた会議を、一つの問いで立て直す
著者: Automanager

はじめに
会議は終わったのに、結論は「各自持ち帰り」。次の会議でも話がかみ合わず、また持ち帰りになる。複数の部門やベンダが関わるプロジェクトで、こうした場面に覚えがある人は多いのではないでしょうか。
プロジェクトマネージャー(PjM)の仕事というと、進捗管理や課題管理、スケジュール調整を思い浮かべる人が多いと思います。どれも重要な仕事です。ただ、その前提として、関係者の間で「何のために、何を決めるのか」を揃えることも、プロジェクトを推進する役割の大切な仕事です。
私は、プログラムマネージャー(PgM)として、複数のプロジェクトを横断して見る立場で仕事をしています。この記事では、私が参加したキックオフミーティングでの経験をもとに、会議を前に進めるために揃えるべきことを整理します。
※ 実際の事例をもとにしていますが、特定を避けるため、一部の情報を省略・一般化しています。
1. 会議を重ねても決まらないとき、何が起きているか
複数の関係者が参加する会議では、さまざまな意見や課題が出てきます。議論が進むにつれて、当初の目的から話が逸れることも少なくありません。
例えば、次のような状態です。
- 今日の会議で何を決めるのかが曖昧
- 誰が判断するのかが不明確
- 結論が出ず持ち帰り事項だけが増え、それを確認するための会議がまた設定される
こうなると、会議を重ねても意思決定は進みません。会議の回数が増えることと、プロジェクトが前に進むことは別の話です。
このような状況では、ファシリテーションの技術や進行の工夫に目が向きがちです。しかし、議論の前提が揃っていなければ、進行を工夫するだけでは根本的な解決にはなりません。
まず確認すべきなのは、議論の進め方ではなく、何を実現するための議論なのかという点です。
2. 実際にあったこと:目的が共有されないまま進んだキックオフ
複数の部門とベンダが関わる、2つのシステムを連携させる開発のキックオフミーティングがありました。
私はPgMとして参加していました。個々のシステム開発の進捗を管理する立場ではなく、複数のプロジェクトを横断して、全体として目的が達成されるかを見る立場です。会議の進行役ではありませんでした。
会議では個別の論点が次々に話し合われましたが、開発の目的は共有されないまま議論が進んでいきました。最後は「不明点は各自持ち帰り」という形でまとまりかけました。
ただ、何を持ち帰り、何を回答するのかについて、関係者の認識が揃っているようには見えませんでした。このまま持ち帰れば、それぞれが別々のことを確認し、次の会議でまた話がかみ合わなくなるおそれがあります。
そこで私は、こう確認しました。
そもそも、本開発の目的は何なんでしょうか?
私自身は目的を把握していましたが、参加者の間で共有されているかを確かめるために、あえて質問の形で場に投げかけました。
その結果、このシステム連携の目的が、事業に貢献するためのデータを蓄積することだと、参加者の間で確認できました。その目的に照らして、外部結合テスト、ファイル交換テスト、シナリオテストのそれぞれで何を確認すべきか、各システムがどこまで確認すべきかを整理できました。
例えば外部結合テストでは、テストケースはそれぞれのシステムで作成し、テストデータの作成など必要な部分だけを相手側のシステムに依頼する形に決まりました。
目的から逆算することで、この場で決めるべきことと、それぞれが持ち帰って確認すべきことが明確になり、プロジェクト自体も前に進んだと感じています。参加者の一人からも、テストの範囲が気になっていたので明確になって助かった、という声をもらいました。
3. 会議を前に進めるために揃えておきたい4つのこと
このキックオフで起きたことは、会議の前や冒頭で前提を揃えておけば、防げた可能性があります。
私が会議で意識しているのは、次の4点です。
① 目的:何を実現するためのプロジェクトなのか
まず、そもそも何を実現するためのプロジェクトなのかを確認します。
キックオフの例で欠けていたのは、まさにこの目的の共有でした。個々の論点は、目的に照らして初めて、今決めるべきことかどうかを判断できます。複数の部門やベンダが初めて集まるキックオフでは、特に重要です。
② 成功条件:この会議で何が決まれば成功なのか
次に、この会議が終わったときにどのような状態になっていれば成功なのかを明確にします。
単なる情報共有なのか、論点と担当者の整理なのか、方針決定なのか。ここが明確になっていれば、議論が広がったときにも、本来のゴールに立ち返ることができます。
③ スコープと責任:何を決め、誰が判断するのか
今日決めることと、今日決めないことを明確にします。あわせて、誰が判断するのか、どこまでを各部門やベンダが担当するのかも確認します。
すべての課題を一度に解決しようとすると、議論が広がり続けます。今の状況を前に進めるうえで最も重要な課題は何かを見極め、そこに議論を集中させます。
④ 次のアクション:誰が何をいつまでに確認するのか
「確認します」だけでは、次のアクションとして不十分です。持ち帰り事項は、次の5点まで具体化します。
| 確認事項 | 確認する理由 | 担当 | 期限 | 結果を受けて判断すること |
|---|---|---|---|---|
| (例)連携ファイルの項目定義 | テスト範囲を決めるため | 〇〇部門 | 次回会議まで | ファイル交換テストの対象範囲 |
特に重要なのは、確認結果が次の意思決定にどうつながるのかまで明確にしておくことです。ここまで決めておけば、持ち帰った後の認識のずれを減らせます。逆に曖昧なままだと、持ち帰り事項を確認するための会議が新たに必要になります。
4. 進行役でなくても、会議を前に進められる
ただ、会議の前や冒頭を整えられるのは、主催者や進行役です。参加者の立場では、準備が足りていない会議に途中から加わることもあります。
それでも、できることはあります。
キックオフの例で私がしたのは、終盤に質問を一つしただけです。それが、議論の前提を揃え、テストの範囲や役割分担を決めるきっかけになりました。最初に揃っていなくても、途中から立て直すことはできます。
後で振り返ると、前提が揃っていないことに気づいていたのは私だけではありませんでした。誰かが気づいていても、口に出されないまま会議が進むことはあります。だからこそ、気づいた人が問いとして場に出すことに意味があるのだと思います。
もちろん、PgMという立場だったからこそ発言しやすかった面もあります。ただ、問いの形にすれば、立場に関係なく場に投げかけることはできると考えています。
例えば、次のような聞き方ができます。
- 「確認なのですが、今日決めたいのは〇〇で合っていますか?」
- 「この件は、今日は決めないという整理でよいですか?」
- 「持ち帰りは、誰が何をいつまでに確認する形にしましょうか?」
大切なのは、誰かの進め方を否定するのではなく、全員の認識を揃えるための確認として聞くことです。
ほかの人が進行している場で発言するときは、進行そのものを引き取らないことも意識したいところです。議論を進めるのは進行役の役割です。PgMとしての私の役割は、前提がずれていることに気づき、それを問いとして場に戻すことだと考えています。
5. まとめ:曖昧さを減らして前に進めることが、プロジェクトを推進する役割の価値
PjMやPgMの仕事は、進捗表を更新したり、課題一覧を管理したりすることだけではありません。複雑な状況を整理し、本質的な課題を見極め、関係者が意思決定できる状態をつくることも重要な役割です。
私が考える、プロジェクトを推進する役割の価値は、次の一言に集約できます。
複雑な状況を整理し、目的と優先順位を明確にして、人と組織を前に進めること。
会議を一つ開くときも、予定された議題をこなすのではなく、その会議によって何が前に進むのかを考える。そして、前提が揃っていないと気づいたときは、途中からでも問いを投げる。「そもそも目的は何か」という一つの問いが、プロジェクトの進み方を変えることがあります。